Far away ~いつまでも、君を・・・~

その翌週は県大会。こちらは主力組がエントリ-し、彩、遥、町田ら4人が個人戦に。そして団体戦は1チ-ム3名で男子1、女子2組が出場する。


「後輩達のリベンジだからな。とにかく予選通過は最低条件だ。」


という町田の言葉に


「うん。夏のような無様な真似だけは絶対に出来ないし、しないから。」


と答える彩。


「彩、気持ちはわかるけど、あんまり力入り過ぎても、よくないよ。」


「わかってる。」


遥に言われて、頷いては見せたが


(無様な成績で、みんなの足を引っ張るわけにはいかない。だって、夏の時と違って、私は主将なんだから。)


せめて彩があと一中してくれたら・・・そう言って恋人の胸で泣いていた由理佳の声がまざまざと甦って来る。チ-ムメイトにもう、そんな思いは絶対にさせたくない。力を入れるなと言うのが、無理なことだよ。彩は思っていた。


やがて彩が、徐々に鬼気迫る雰囲気を、周囲に感じさせるようになって行くのに、大した時間は掛からなかった。もともと、彩の弓道に対する姿勢は、ストイックと評しても言い過ぎではなかったが、練習中はほとんど言葉も発しないで、黙々と弓を引き続け、その姿に他の部員どころか、顧問の児玉ですら、声を掛けるのを憚られるほどだった。


週が進み、この日の練習は、「立練」と呼ばれる、きちんと的中数の記録をとる、本番に備えた練習だった。


団体戦に出場する選手、男子1、女子2チ-ムの計9名が、試合同様に各4射、計12射する。そして5中以上で予選通過、決勝に進める。


(マチヒロも言ってた通り、まずそこはなんとしてもクリアしないと。)


彩のそんな思いの中で、立練は始まった。
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