Far away ~いつまでも、君を・・・~
練習が終わり、尚輝が更衣室を出ると


「尚輝!」


待ちかねたと言わんばかりに、京香が駆け寄って来る。


「京香、お待たせ。」


「お疲れ様。」


「ありがとう。」


そう言って、笑顔を交わし合うと、京香は尚輝にぴったりと寄り添って来る。


あの日、彩が立ち去るのを待ちかねたように、姿を現した京香は


「いよいよ、私の番だね。」


と言うと、驚いて自分を見ている尚輝に


「ずっと好きでした、二階くんのことが。」


想いをまっすぐに告げた。


「えっ、えっ・・・?」


全く予期しなかった京香の言葉に、慌てふためく尚輝。少し間を置いて、ようやく


「で、でも、菅野はずっと俺のこと、応援してくれたじゃないか・・・。」


「うん、好きな人の気持ちを尊重したかったから、応援したし、相談にも乗ってた。でも、もういいでしょ?自分の気持ちを押し殺さなくても。」


そう言って微笑む京香に、尚輝は完全に言葉を失う。


「いきなりそんなこと言われたって、そう思ってるよね。失恋して、すぐに他の女子のことなんか考えられるかって。その二階くんの気持ちは、当然だと思う。」


「・・・。」


「ごめんね、でももう私は待てなかったの。だから・・・今すぐにお返事下さいなんて言わない。ただ、私のこと、考えてみて欲しい。今日はそれをお願いしたかったの。どうか、よろしくお願いします。」


そう言って、頭を下げると、京香は走り去って行った。


(なんだよ、どういうことなんだよ・・・。)


まだ事態がよく呑み込めなくて、尚輝は茫然と、京香の後ろ姿を見送っていた。


翌日、混乱した頭のまま、昼休みに秀を呼び出した。入学後、一番最初に仲良くなり、京香の幼なじみでもある秀とは、今年はクラスが別になってしまい、1年の時よりは交流がなくなっていた。


「どうした?」


弁当を食べ終え、自分の前に姿を現した秀に、尚輝は昨日のいきさつを告げた。


「京香は、昔っからお節介焼きだったが、なるほど、そういうことだったのか。」


話を聞いた秀は、そう言って笑った。
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