lens ll
一の頭には、幼い頃から隣にいるのが当たり前だった、毛利静音(もうりしずね)の顔があった。



写真部に所属していた彼女は、文化祭が終わった後、一にカメラを手にしながら訊ねた。

「一、この写真をコンクールに出していいかな?顧問の先生が「いい出来だから出してみたら?」って言ってくれて」

そうどこか切なげに笑った静音に見せられた写真を見て、一は「こんなのいつの間に撮ってたんだよ!」と言ってしまう。カメラの中には、幸せそうに笑っている一が映し出されていた。

「ごめん、勝手に撮っちゃって。いい笑顔だったからつい、シャッターを切っちゃった」

静音は謝りつつも、「よく撮れてるでしょ?」と笑う。一はジッと写真を見た。恐らくこれは芽衣と話している時に撮られたものだろう。画面の中に映る自分は目を細め、頰を赤らめ、笑っている。

「俺、こんな笑い方もするんだな」

写真を見てポツリと一は呟く。友達と教室の中でゲームで盛り上がったり、掃除の時間にふざけている時とは違った優しい笑顔だ。こんな笑顔になるのは、きっと芽衣という特別な人のおかげだろう。
< 2 / 11 >

この作品をシェア

pagetop