千燈花〜ETERNAL LOVE〜

茅渟王と陵王の舞

 「燈花(とうか)様、起きておいでですか?」

 戸口から小彩(こさ)のかすれた声が聞こえた。

 「えぇ、今、目が覚めたところよ…」

 ガタガタっと戸口を開けると、目を腫らした 小彩(こさ)がしょんぼりと立っている。

 「小彩(こさ)もしかして眠れなかったの?」

 「はい…」

 小彩(こさ)がかすれた小さな声で答えた。

 「大丈夫、心配ないわよ…」

 何の根拠もないが、あんなに泣き腫らした彼女の顔を見たらそう言うしかなかった。
 
 「はい、そうだと良いのですが…」

 小彩(こさ)は暗い表情で力なく答えるだけだった。

 「明日は大王様のお屋敷で重要な宴があるのでしょう?そんな腫れた顔ではいけないわ」
    
 「はっ⁉︎そうでした!明日は大王様にも山代王(やましろおう)様にも拝謁できるのでしたね!」

 小彩(こさ)は急に何かを思いついたように言うと、大きく目を見開いた。

 「燈花(とうか)様、妙案がございます。お願いです!もし山代王(やましろおう)様とお話する機会があれば、昨晩の出来事で私達におとがめがないようにお願いして頂きたいのです。山代王(やましろおう)様と林臣(りんしん)様は旧知の仲、兄と弟のようなものでございます。きっと聞き入れて下さるはず!」

 小彩(こさ)が目を輝かせて興奮気味に言った。さっきまでの暗い顔が嘘のようだ。

 「まだ話したこともない方にいきなりそんな不躾なお願いなんて出来ないわよ。しかも王族の方なのでしょ?それこそ首が直ぐに飛んでしまうわ」

 「はぁ…そうでございますね」

 小彩(こさ)はまた暗い表情へと変わり肩を落とした。

 「大丈夫よ小彩(こさ)何も起きたりしないわよ。さぁ元気を出して、明日の宴の準備をしましょう」

 「…はい、そういたします」

 小彩(こさ)はまたしょんぼりうつむくと黙って自分の部屋へと戻っていった。

 あんなに小彩(こさ)が怯えるなんて、林臣(りんしん)様って一体何者なのよ…
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