千燈花〜ETERNAL LOVE〜

時を超えて

 「何者なのだ?」

 「よくわかりません、どういたしますか?」

 「よくわからぬ者だが、とにかく村まで運ぼう」

 しゃがれた声と若い男の声が夢の中で聞こえた。バタバタといくつもの足音が聞こえたが、またすぐに意識を失った。

      あぁ、寒い…

 凍えるような寒さに目を覚ました。手足が氷のように冷たく感覚がない。転んだ時に頭を打ったのかひどい頭痛にも襲われた。どこかの家屋の中だろうか、暗く低い天井が見慣れなかった。

 ゆっくりと起き上がると、目の前に小さな戸口らしきものが見えた。背丈よりも低い戸口の隙間からは明るい陽の光が差し込んでいる。よく見ると服も自分の物ではなく、生成の生地を上からすっぽりと被っているようで、妙な感覚だった。

 まだ夢の中にいるのだろうか…この服はいったい…

 訳がわからないまま、力なく立ち上がると、よろけながら光の指す戸口の方へと歩いた。戸口から外を見て驚いた。目の前には五重の塔らしきものが空高くそびえ立っている。20メートル以上ありそうな高さだ。さらに遠くには青々とした山々が美しく連なっている。

 五重塔の近くには藁ぶきの建物もあり、その裏は鬱蒼とした森になっている。近くに小川でも流れているのか、チャポチャポと水の流れる音が聞こえた。

        …ここはどこ!?


 完全に頭の中が混乱している。思わず目をギュッと閉じた。

  この夢なんなの!早く目覚めて!

 自分自身に強く言い聞かせた後、恐る恐るゆっくりと目を開いた。しかし夢は覚める事なく同じ景色が広がっていた。

 
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