海辺の家、そしてあなた
私は絵画には疎いので、全く知らなかったが、清海さんは、美大在学中から、本格的に活動を始めているとのこと。

先入観を与えず、ちゃんと絵画のみで勝負したいということで、今は完全に覆面画家としてやっているらしい。

「確かに、清海さんが顔出ししちゃうと…ルックスのよさに気を取られる人も多いかもしれない」

そう言うと、清海さんは苦笑いで、

「自分ではイマイチわからないけど、僕の顔がいいっていう物好きな人も世の中には居るからね」

物好きも何も、実際に清海さんは、端正な顔立ちでスタイルもいい。

「でも、私に顔がバレちゃって良かったの?」

「うん。本当の目的があるからね」

一体、何だろう?

「海香子ちゃん、地元を離れて社会復帰したいって言ってたじゃない?」

「うん」

「僕ね、生活の本拠も住民票も、ここからもう少し北上した海辺の町に移そうかと思ってるんだ。何も、東京で部屋を借りなくても、必要に応じて飛行機で行けばいいし」
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