海辺の家、そしてあなた

平日のこんな時間に、磯釣りに来るということは、てっきりリタイアしたおじさんかと思っていたが、その釣り人は、まだかなり若い。

２０代後半ぐらいだろうか。

しかも、かなり端正な顔立ちをしている。

ふと、彼と目が合うと、相手は小さく微笑んでくれた。

なので、私もぎこちなく微笑み返す。

「君…地元の子？」

声をかけられてしまった。

「はい。すぐ近くなんです。お兄さんは？」

「僕は、東京と山形に家があって、気分で行ったり来たりだよ」

それって…もしかして、本妻と現地妻が東京と山形に居たりするのだろうか。

「あはは！何か変なこと想像してる？」