海辺の家、そしてあなた
父の問いに、

「僕は、ちょっと神経質なところがありますからね。仕事の能率よりも、心を許せる人でないと、アシスタントはお願い出来ないんですよ。海香子さんは、まさにうってつけなんです」

全然神経質ではないと思うけれど、芸術家の頭の中は、私のような凡人には理解出来ない。

しかし、理解は出来なくても、彼の優しさなら、もう既に知っている。

「では…ふつつかな娘ですが、よろしくお願い致します」

まるで、私を嫁にでもやるかのように両親が頭を下げ、

「責任をもって、大切なお嬢さんをお預かり致します」

3人とも頭を下げているので、私も倣って頭を下げる。
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