海辺の家、そしてあなた
「まぁね。サボってばかりいたら、海香子ちゃんに幻滅されそうだし」

いたずらな笑みを浮かべて清海さんは言う。

「幻滅はしないけど、世の中の絵心ある人たちは、清海さんの絵を心待ちにしてるから」

「さりげなく発破かけられたなぁ…じゃあ、今日は集中しますか」

清海さんは思い切り伸びをすると、最後にもう一度軽くキスを残して、アトリエへ向かった。

いつも、無理しなくていいと言ってくれるけれど、私は無理して頑張ったりなどしていない。

大した仕事をしていないということもあるが、出会って間もない頃、無理しなくていいと言ってくれた時に、私の心は、もう救われていたから。

これからもずっと、こんな風にのんびりと、穏やかな幸せが続くのだろう…そう信じ込んでいた。
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