海辺の家、そしてあなた
しかし、誰も私たちのことを知らないし、他の恋人たちは二人の世界に入り込んでいると判ったら、開放的な気分になれた。

初めての恋、初めての蜜月に、私は浮かれ過ぎたのだろうか。

二人きりの世界に酔って、忍び寄る影など気付きもせず…。


ある日、清海さんは仕事の都合で、飛行機で上京することになった。

私も行きたいかどうか意思確認をされたが、仙台ならともかく、東京はどうだろう…と、躊躇っていたら、

「そうだよね。じゃあ、朝イチの便で行って、最終で帰ってくるから」

「無理しなくても、向こうで一泊してきたら?とんぼ返りじゃ、疲れそうだし」

「いやいや、僕のほうがさっさと戻りたいんだよ」

そう言うと、私を強く抱きしめ、何度もキスする清海さん。
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