天才パイロットは交際０日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

　歩き姿さえも洗練されていて、近づくにつれ心拍数が上がってしまう。そんな私のそばにやってきた相良さんは、ふっと余裕が漂う笑みを浮かべる。

「あれから、俺のこと考えてた？」

　無線よりもずっと色気のある生の声で、挨拶をすっ飛ばしてそう言われた。その第一声で辺り一面真っ白な雪の日の情景が瞬時に脳内に映し出され、大きく心臓が飛び跳ねる。

　悔しいけれど彼の思惑通り、考えずにはいられなかった。だって、あなたが私のファーストキスを奪ったのだから──。

『君の頭の中、今俺のことでいっぱいになってるだろ』

　突然の口づけの後、彼は白い息を立ち上らせてそう言い、不敵に微笑んだ。それはまるで、過去の恋に囚われた私に、他の男を見ろと暗示をかけるかのように。

　冷えた唇に落とされた熱いキスの感覚まで蘇り、私は頬を火照らせながらきゅっと唇を結んだ。