可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
サイラスの執務室で、エリアーナは生き血ジュースを口の周りにべったりつけていた。


だがその耳がしゅんと垂れていて、サイラスは何が原因かじっくり考えた。お腹が痛いくらいしか思い当たらない。


「耳が垂れてる。どうかした?」

「先生、あのな」


サイラスが優しく問いかけると、エリアーナは空っぽになった生き血ジュースのコップを見つめて小さな声を出す。



「アイニャのことなんやけど」

「細胞の使い魔か?」

「そう、うち何回も遊んだことあんねん。

……友だちやってん」



何でもすぐ忘れてしまうエリアーナが、ベアトリスの使い魔のことを話し出す。サイラスは意外過ぎて目をしぱたいた。



「死ぬなんて思わんかった。金のロッドを盗って、あの女を泣かそうと思っただけで」

「悪いことにはリスクが伴う。予想外のこともある」

「うん」

「ジンは不問にすると言ったから、

次から気をつければもういいだろう?」



金のロッドを奪う案は、サイラスが知恵を貸した。だが、実行犯はエリアーナだ。

さっぱりしているサイラスと違って、垂れ耳エリアーナは目に涙を溜めた。



「そうやけど。アイニャ、ネズミくれたりして、一緒に狩りして遊んで楽しかってん……ええ子やってん。


うち、悪いことしてしまった」



今までサイラスの入れ知恵を得て、散々悪いことをしてきたエリアーナである。だが、今回の大きな失態はエリアーナの心に響いたようだ。


エリアーナの情緒の成長にサイラスは驚いてしまった。

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