可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

ドクロ弟がエリアーナの目隠しを取ると、鍾乳洞の中の一角に封印石が置かれていた。フェルゼンが、太くて鱗で覆われた足を持ち上げて跪いていたエリアーナの頭を踏みつけた。


「うぐぅ」


エリアーナは頭を踏まれて、地面を舐めさせられる。涙がぼろぼろ零れ落ちたが、拭いてくれるものはいない。さらに強く後頭部を踏まれて、口に砂が入りジャリついた。


「俺は封印術も知識としては学んでいてねぇ。もし、違う詠唱し始めたらすぐに腹掻っ捌くからそのつもりでねぇ」


腹からジワリと浮いた血が、エリアーナのメイド服を染める。エリアーナは強烈な痛みと惨めさにジャリジャリする口で、唇を噛んだ。


(死にたくない。先生、うち言われた通りにしてええんやんな)


エリアーナはサイラスに、万が一、脅された時は相手に従えと言われていた。


サイラスはエリアーナの命第一だ。


『でもうちが封印解いたら怖い奴が出てくるんやで?ええの?』

『大丈夫だよエリアーナ。僕が倒してあげるから。お願いだから生きて帰ってきて』

『わかった!!』


サイラスの優しい笑顔が思い浮かぶ。両手がなくても、口があれば封印を解くための逆詠唱はできる。


エリアーナはピンク眼から涙を零して、腹の痛みに耐えながら逆詠唱を始めた。


(先生、助けて)



< 161 / 232 >

この作品をシェア

pagetop