可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

二人を見送って、ベアトリスは息をつく。


加護に相手を閉じ込める方法はエリアーナから学んだものだ。裏庭でエリアーナが球体にパクンを封印していた。



何かを守る障壁は、

逆に何かを閉じ込めることもできる。



ベアトリスは危機を前に、ぷるんを存分に使いこなせる発想力を進化させていた。



ベアトリスは監視塔のてっぺんで叫ぶ。


「ぷるん様!加護対象をカオスに変更ですわ!

加護の通り抜けを中からも外からも一切禁じます!」

「ぷるーん!!」


ぷるんが魔王城の加護を解いた瞬間、すぐにカオスを取り込む。カオスは生温い感触に首を左右にきょろきょろ揺らした。


違和感が気持ち悪いのか、身体をばたつかせて魔王城から後退する。


魔王城に密着していたカオスから少し距離を取れて、ベアトリスは息がしやすくなった気がした。


だが、カオスはまた真顔で変わらずにぷるんの体内を齧り始める。


やっていることは終始無策でアホだが、じわじわと確実にぷるんにダメージが蓄積されている。


シンプルな力ほど脅威だ。


「ぷるるるー」


我慢を示すぷるんの声が苦し気に聞こえてくるようになっていた。心なしか、薄青いはずの身体が灰色がかって見える。



ぷるんの限界が先か。

封印が先か。

時間との勝負だ。


< 182 / 232 >

この作品をシェア

pagetop