不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 振り返ると、黒いパンツのポケットから髑髏のキーホルダーをぶら下げた男が立っていた。

 羽積(はずみ)だ。

「あー、お疲れ様です、こんばんはー」
と会社で言う定型文のような挨拶を返す。

「別に疲れてないが」
と言いながら横に立つ羽積に、

「いやー、ここって遅くまでやってるじゃないですか。
 深夜に家のすぐ側でテレビ買えたり、ブルーレイレコーダー買えたり、扇風機買えたりするのってすごいな~って、しみじみ思って眺めてたんです」
と言う。

「深夜にテレビや扇風機買う機会があるのか?」

「ふと思い立って髪が切りたくなるみたいに、買いたくなるかもしれないし。
 夜中にいきなり壊れるかもしれないし」

 なるほど、と言いながら、羽積はブルーレイのディスクを見ていた。

「それ買いに来たんですか?」

「いや、カップ麺」
とディスクを手にしたまま、言う。
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