「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「こちらです。葡萄の名産地のものです。きっと美味いはずです」
「ありがとう。貴重なものだろう? いいのか?」
「もちろんです。ぼくらはめったに飲みませんので。これは、お二人にと入手したのです」
「そうか。だったら、遠慮なく。カヨにもそう伝えるよ。彼女もよろこぶに違いない」
「ほんとうですか? よろこんでもらえたらうれしいです」

(フェリペ。きみは、純粋すぎる。諜報員としても恋する男としてもまだまだだぞ)

 彼のことを、仔犬みたいだとつくづく思った。

 おれもまた、彼を弟扱いしているようだ。
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