「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 が、彼女が言っていた。

 おれとは腐れ縁、だと。

 カヨは、やはりおれをそんなふうにしか見ていないのだ。

 腐れ縁、か。

 ショックがジワジワと体内に広がって行く中、顔は無理矢理ポーカーフェイスを保ち続ける。それもかぎりがあるだろう。それでもがんばった。

 いつかきっと、彼女に想ってもらいたい。

 おれとずっといっしょでよかった、と。おれは唯一無二の存在だ、と。

 おれは、ガラス扉から庭へと出た。

 心の中で気合いを入れながら。
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