「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする～手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある？～

「驚く？　なぜかな？　アルファーロ帝国の外交官に対して驚く必要があるとは思わないが。しいていうなら、外交にいっさい携わっていないおれに面会を求めてきた、というところかな」

　アルマンドは、執務机の向こうで不思議そうな表情を浮かべた。

　が、彼の青色の瞳(め)は、わたしが口惜しそな表情を浮かべるのを見逃さないよう真剣である。

（やってくれたわね）

　舌打ちしたくなったのをガマンする。

　こちらが詐称したのを、まんまと利用されてしまった。

　というよりか、面識があっていろいろ話をしたという事実がなかったことにされた。

　正直、口惜しいけれどそれを表情に出して彼をよろこばせるつもりはまったくない。