「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 唐突に目が覚めた。

 薄暗い。

 それでも、なんとか見える。

 薄暗い中にボーッと浮かび上がっているのは、天蓋かしらね?

 天蓋?

 事態の把握につとめた。

 んんんんん?

 天蓋? わたし、たしか長椅子の上に横になったわよね?

「スピ―、スピピピピ」

 そうと気がついた瞬間、すぐ近くから寝息らしきものがきこえてきた。

 それはもう気持ちのよさそうな寝息で、その寝息に誘われてまた目を閉じてしまうところだった。

 その誘惑を打ち消すかのように、首を左右に振った。

 すると、それが目に飛び込んできた。
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