「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「だから、いっしょに行こう」
「いやよ。どうしてわたしがあなたといっしょに行かなければならないの?」
「だってそうだろう? 婚約者に裏切られた者どうし、涙にむせびながら手に手をとって隣国へ行き、そこで成り上がるんだ。最終的には、連中にしあわせなところを見せつけてやる。これってすごくいい復讐だと思わないか? 最高の『ざまぁみろ』、だ」
「バカバカしい。あなたって、あいかわらずお子ちゃまね。だいたい、わたしはあなたのことが大嫌いなの。だれかとしあわせになるんだったら、すくなくともあなた以外よ。犬とか猫とか聖獣とか魔物とか」
「おいおい、おれだってきみが大嫌いだ。だが、世の中には契約婚とか夫婦のふりとか、そういう結婚生活が多々あるだろう? そう割り切ったら、おたがいに好きなことが出来る。目的を達成するには最高の条件じゃないか。真の目的は復讐じゃないしな。単刀直入に言おう。おれにはきみが必要だ。きみの『世紀の悪女』としてのすべてがな。力を貸してくれ。ぜったいに損はさせない」
「呆れたわ。結局、しあわせとか『ざまあみろ』とかはどうでもいいんじゃない」
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