天使が消えた跡は

 一週間が経った。諸事情によりルークに居てもらっては困る時は、廊下に放り出したりしてなんだかんだと問題なく生活が進んでいる。

 その日も朝のニュースを見ようとテレビをつけた。内容は、例の王子様の婚約者の一人が無残な死を遂げたと言う内容だった。

 その場にルーとルークもいたが、それぞれ顔を見合わせて『彼女』が動き出したと確認する。

 実は薫は運動神経も抜群で、顔立ちも悪くないことから行内では人気者だ。この話題がニュースで取り上げられるたびに何人もの友人や彼女のファンが囲みに来る。

 当の本人は自分が愛らしい風貌をしていることを自覚していないので正直面倒でしょうがないところだ。

 そんなニュースを見た数日後。ルーを連れて校内にある購買までお昼のお弁当を買いに行こうとしていたその道の途中の事だった。

「あの人誰だろう……?」

 薫がそう呟いて見たその視線の先には、とても整った顔立ちのいわゆる美人のお手本と言えるような黒人女性が立っていた。
 学校の関係者? でも外国人……。

 その時には特に気にせずに通り過ぎたのだが、その日の授業を終えて良に帰ろうとしていた帰り道で昼間の彼女に声を掛けられた。

「コンニチワ」

 片言の日本語だった。歩いていたらたまたま昼間の女子高生に会ったから声を掛けた。

 という雰囲気ではない。明らかに何かの用事がありそうだ。

 不思議に思いながらも薫もそれに答える。

「こんにちは」

 じっと見てくる彼女。そして長い長い沈黙。

 明らかに薫を見ているのだが、それ以上話をしようと思わないのか彼女の口は閉じたままだ。

 よく分からないな。そう思って量に帰ろうとした薫に何かが近付いてきた。

「犬?」

「サヨナラ」

 彼女の口からそんな言葉を聞き取ったかと思ったその直後、真っ黒い『何か』が子犬の身体から勢いよく何本も飛び出してきた。
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