天使が消えた跡は
第5章 彼女は本気だ
 あれから一か月程。平穏無事な生活を送っていた。

 気が付けばルークの存在も学校内では後任となっていた。今ではルークやルーを見て驚いた顔をする生徒は居ない。



「じゃぁね!」

 学校の授業も終わり、部活や居残りのある生徒たちに別れを告げて薫は寮へ走ってゆく。

 別に走って帰る理由はあまりないのだが、たくさんの学校生徒とマスコミに捕まらないように周りに誰も居なくても走るようにしていた。半分、癖になって来ていたのだが。

 教室のドアを開けて右側へ。2階まで上がるとそのまま渡り廊下を走って女子寮までの道のりを進むだけ。

 所要時間2分ほど。どんどんタイムが縮んできている気もする。

 部屋の前に着いてドアを開けると床に封筒が落ちていた。誰かから郵便が届いたらしい。

 一瞬実家からの手紙かとも思ったが、可愛らしいプリントの入ったレターセットではないところからその可能性は否定された。

 随分とシンプルで、よく見ると海外からの郵便物だ。

 靴を脱ぎ、ルークに簡単に『ただいま』と言うとそのままベッドに座り封蝋を開けた。

「手紙か?」

 薫よりも前からベッドに寝転がっていたルークが言う。

「うん。でも誰からだろう、こんな立派な手紙……あ、例の王子様からだよ? なんだろう」

 その内容は、今期の冬に一度王子様のところに来るようにというものだった。

「冬? まだ半年くらいあるけど11月かな? 12月かな?」

 そう言いながらおもむろにテレビの電源を入れた。が、起き上がったルークにリモコンを取られてしまう。何度もチャンネルを変えて何かを探しているようだった。

「ちょっと、見たいテレビがあるんだけど。リモコン返してもらえないかな」

 そんな薫の言葉に耳を貸すこともなく、ルークはひとつの番組でチャンネルを変えるのをやめた。

 またニュース?

 そう思う薫の目に入る画面には『王子の婚約者殺害される』という見出しがあった。

 気が付けばルークと一緒にそのニュースに見入っていた。婚約者の10人のうち8人が殺されてしまったと言う内容だった。

 どう考えても残っているのは薫と『サラク』という彼女の存在しか残っていない。

 本当にみんな殺してしまったのだろうか……。
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