天使が消えた跡は
第9章 天使が消えた跡は
――――――――ルーク!!!



 自分でも驚くほどの大きな声。

 そして、その開け放たれたままの薫の瞳に映るのはマントと、フードを被った王子様が。

 その右手からは、渚と同じように黄色い光のナイフ。


 一瞬だった。



「―――――――――――――!!!」



 耳が痛い! 巨大な吠え。

 そして、サラクの身体はどろどろと溶けて跡形もなく消えてしまった。

 最後の黒い粒が消える瞬間、その周りで大きな風が舞い起こる。

 同時に王子様のフードが風で捲くれ上がった。



「呼んだかい?」



 そう言う彼の顔は、ルークそのままだった……。

 薫は立ち上がり、訳も分からずその髪に、顔に触れしっかりとその顔を確かめる。

 確かにルークの顔だった。

 泣きじゃくる薫をだきかかえ、優しくその唇にキスをする。

 そしてぽつりぽつりと話を始めた。

「ごめんね、いきなり消えた時は哀しかったでしょう」

 うん、うんと頷きいっそうルークにしがみつく薫。涙はまだ止まる気配を見せていない。

 薫の頭をポンポンと優しく撫でるルーク。

「もうわかってると思うけどあの天使は俺だよ。俺の分身。分かれて行動できるんだ」

ルークはゆっくりと薫が座っていた椅子に腰かけ、その膝の上に薫を座らせる。

「分身を作ることは出来るんだけど、同時に光の力を薫に貸したからね、力がなかったんだ。

 返してもらったよ、光のナイフ」

 そう言うとルークは薫の右手をそっと両手で挟むように撫でる。

「ごめんね、俺も辛かった。本当は本体で日本に向かいたかった。

 だけどサラクの状況が思ったよりも早く進展してしまってね。両方を確認するためにはこうするしかなかったんだ。」

そう言って優しく薫の頬を撫でる。

「愛する人を守りたかったんだ。だけど、光の武器を貸すことしかできなかった。本当にごめんね。

 こんな状況になってしまったんだけど、俺と結婚してくれるかな」

 ルークに向き直る薫は大きく頷いた。
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