僕の隣には吸血鬼の藤堂明日香ちゃんが・・・

吸血鬼の屋敷に招かれる

 「じゃあ、ついてきて」
 と、明日香ちゃんは、いかめしい門を通った。僕もあとからついていった。
 そこはうっそうと草がしげった、庭だった。枯れ木が不気味にそそりたっていた。
 「まるで吸血鬼の住んでいる屋敷の庭みたいですね」
 と、僕はいった。
 「吸血鬼の住んでる庭みたいでしょ」
 と、明日香ちゃんはいった。
 僕は笑った。明日香ちゃんも笑った。僕と明日香ちゃんは、吸血鬼の住んでいる庭みたいな庭を歩いて行った。庭はいかにも吸血鬼が出そうで、不気味極まりなかった。
 「ほんとに吸血鬼が出そうな庭ですね」
 「ほんとに吸血鬼が出そうな庭でしょ」
 と、明日香ちゃんはいった。
 そうして、僕たちはドアについた。明日香ちゃんは黒く長いカギを取り出した。ずいぶんクラシカルなかぎだ。それをドアのカギ穴に差し込んだ。がちゃ、と鍵が開いた。明日香ちゃんは、カギをしまった。明日香ちゃんはドアを開けた。中へ入った。明日香ちゃんは振り向いた。
 「どうぞ」
 と、明日香ちゃんはいった。
 「お邪魔します」
 と、僕。僕は明日香ちゃんちへ入った。
 「僕も家の人に招かれないと、人んちに入れませんよ」
 と、僕。
 「え、あなたも吸血鬼だったの?」
 と、明日香ちゃん。
 「あは、違うよ。普通の人間。普通の人間だって、招かれないのにその人の家に入ることはできませんよ」
 「そうなんだ。普通の人間もその家の人に招かれないと、その人の家に入ることができないのね」
 「そうだよ。普通の人間だって、その家の人に招かれないのに勝手に入ったら、不審者だよ。通報されてしまいますよ」
 「うふ。そうなんだ」
 明日香ちゃんは靴を脱いで、あがった。
 「どうぞ」
 と、明日香ちゃん。僕も靴を脱いで、あがった。明日香ちゃんは廊下を歩いた。
 
 
 
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop