一途な気持ちは止められない

図書室の片隅で

 図書室。隣り合って座っているのは、もちろん藍と夏菜子だ。
 




「では、いただきます」





 そう言うと藍は夏菜子の右耳に小さくキスをした。




「今日もおいしいです」




 夏菜子は毎日のこのキスが恥ずかしくてしょうがなかった。


「さて、今日も勉強頑張りましょうか!」


 張り切っているのは藍だけだ。夏菜子にとっては苦痛の時間であり、辱めの時間だった。


「今日も可愛い夏菜子は、苦手な英語を頑張りましょうか」


 そう言って授業で使っている教科書とノートを開く。


 夏菜子もしぶしぶといった感じだ。




「どう? 少しは授業の内容が頭に入るようになってきた?」


「授業の内容って、毎日手を繋いだり、話しかけてきたり、授業の内容を確認するどころじゃないよ」



 文句を言う夏菜子に、藍は少しだけ申し訳なさそうな顔をするが、




「そんな困ってる夏菜子もかわいい!」




 と、堂々と頬にキスをしてくる。





 『ドキッ――――……』






 不意打ちのキス程焦るものは無い。


 いや、藍の場合は不意打ちじゃなくても毎日の耳へのキスが大変な刺激になってしまっている。



「じゃぁ勉強始めようか」

 図書室の一番端で、窓もない角の席。

 そこが二人の毎日の勉強場所になっていた。

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