エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
彼女と別れてまだ五分と経っていない。警備の関係で、後方の席にいたはずの堂島さんが菊乃の席にいくのに、さほど時間がかかったわけでもない。そのわずかな間にいなくなったというのか。

「本人に電話をかけてみます」

一度堂島さんとの通話を切り、菊乃に電話をかけるが出ない。何度かかけなおすうちに堂島さんが俺のいるエントランスまで出てきた。

「出ません」
「女性スタッフにトイレを見てこさせたけど、いないようだ。彼女のスマホに位置情報共有を入れていたな」
「はい。今、見ています」

菊乃に断って、防犯対策に位置情報共有アプリを入れてある。位置はホールから動いていない。
堂島さんとホールの座席に戻って菊乃のハンドバッグがそこに残されていることに気づいた。スマホもバッグの中だ。スマホが手元になければ、菊乃の行方は探せない。
足元が揺らぎそうな不安を覚えた。
ヴァローリは菊乃がここに来ているか確認していた。もしも菊乃を拉致しようと考えているなら、この場は最適だ。菊乃が他の情報を持っていると考えて、もしくはこれ以上ヴァローリを不利にしないために彼女の身柄を確保しようとしているなら……。

「ホールの警備責任者に連絡を取って、彼女の特徴を開示して見かけなかったか確認している。表のフードワゴン、裏口付近には該当者なしだ。まだ数分だ。近くにいるはずなんだが」
「堂島さん、地下に搬入口がありましたよね」

このホールの半地下に機材を入れる搬入口がある。業者以外立ち入らない場所だ。トラックなどの大型車が車付けできるようになっている。

「楽器や演奏機材の運び出しは明日です。今は人通りが絶えている。そこから菊乃を連れ出すつもりかもしれません」
「確かにあそこなら目立たずに車に乗せられる。急ごう」

堂島さんの言葉と同時に駆けだした。
菊乃に何かあったらどうしようという不安と、同じくらい絶対に誰にも渡さないという強い気持ちがわいてくる。彼女は俺の妻だ。誰にも触れさせない。
菊乃、無事でいてくれ。

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