エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
十四時半に店を閉め、昼のアルバイトスタッフはここで解散。私は売れ残りなどを積んでワゴンに乗り、一度浅草の本社に戻る。
マルナカ弁当株式会社は私の伯父が経営する弁当製造会社だ。浅草に小さな工場と営業所を持っている。オフィス街に三か所の店舗を持ち、学校や区役所とも契約して弁当を配送している。

「菊乃、夜営業分の発注書を確認しておけ」

営業所に入ると、デスクにつくより先に伯父が声をかけてきた。

「はい、社長」

返事をすると、私の手から昼の売れ残りのリストをひったくるように取る伯父。

「おまえの見立てで日比谷公園店の配食は決めてるが、ロスも少ないし、売り上げは伸びてる。ボーナスは期待しろよ」
「ありがとうございます!」

伯父は体格も大きく、話し口調も威圧的な人だけれど、悪い人ではない。田舎から出てきて仕出し料理屋に婿入りし、一代でお弁当会社を作った人だ。それなりに苦労もしているだろうし、他者への当たりの強さはそれゆえの厳しさなのだと理解している。

「菊乃、GWあたり実家に戻る用事はあるか」
「いえ。お正月に帰ったばかりですし」

私の実家は伯父にとっても生家であり、今は私の両親が暮らしている。山陰地方の農村で、父は地元企業勤めだ。実家の新築や亡き祖父母の介護費用などは、長男の責任だからと伯父がかなり負担をしたそうだ。
私自身、伯父一家には短大時代からお世話になっている。どうしても東京の学校に行きたいと希望した私のため、受験期は宿を貸してくれ、短大に進学してからは、週に何度も夕飯に呼んでくれた。
そんな伯父夫妻に卒業後の進路として「人が足りなくて困っている。うちに勤めないか」と言われ、断りづらかったのは事実だ。
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