エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「田澤さんを脅して、転売の手伝いをさせましたね。私のパスワードを手に入れて書類をでっちあげたのはあなたです。私の筆跡を真似るために、デスク周辺をうろついていたのは何人ものパートさんが見ていました。すべてが露見したら、あっさり逃げて。さらには私に文句を言いに来た、と」

菊乃の勢いに丸中正はすっかり黙り込んでいる。
おそらく、彼女は今までこの男を激しく問い詰めたりしなかったのだろう。情けなくも丸中正は、なめてかかって文句を言いに来た従妹に逆襲され、怒りとショックでぶるぶる震えているのだ。

「全部、全部、ぜーんぶ、正さんの身から出た錆! 私と夫のところへわざわざ住所を調べて押しかけてきたって無駄です。私相手なら、ちょっと脅せば小遣いをせしめられるとでも思いましたか? あり得ないですね! 私は金輪際、あなたには関わりません! 私のところに来る暇があったら、伯父さん伯母さん、会社のみんなに土下座で謝ってきてください!」

思わず拍手したくなるくらい立派な口上だった。やりこめられた丸中正は顔を真っ赤にして言葉を探している。しかし、気の利いた言葉は見つからないようだ。

「わかったらお帰りください。次にこの近くで見かけましたら、ストーカーとして通報します。接近禁止命令を出してもらいましょう」

俺の言葉で、挽回のすべはないと知った丸中正は、怒りと羞恥で真っ赤な顔のままくるりと踵を返した。そのまま小走りでメトロの入口方向まで走っていったのだった。
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