敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜


(トラヴィス様と話しているとたまに自分が特別扱いされていると勘違いしてしまうわ。向こうだって私が義母になることを知っているだろうだから他意はないはず。……多分、生粋の人たらしなのね)

 ちょっとだけ体温が上がった気がしたオーレリアは自分に向かってぱたぱたと手で扇いで風を送る。
 これ以上変な空気に呑み込まれないためにもオーレリアは咳払いをした。

「と、ところで陛下の反応はどうでしたか?」
 上擦った声で尋ねるとトラヴィスが含み笑いをしてから答えてくれる。

「クラウスの結婚の知らせを受けて陛下はとても喜んでおられたよ。オーレリア王女に感謝していた」
「陛下がお喜びなら私も嬉しいです。吉報を受けて少しでも体調が良くなればいいのですが」

 未だ家族以外は面会謝絶中でオーレリアは皇帝と顔を合わせられない。面会できないのは残念だが、未来の夫が喜んでくれているのなら妻冥利に尽きる。


 笑みを浮かべているとトラヴィスは改まった様子でオーレリアに身体を向ける。

「私が言った通り、あなたの力は誰も傷つけないものだ。この調子で末の弟の相手を確認してもらいたい」
「トラヴィス様、そのことなんですが実は話しておきたいことがあります……」

 オーレリアは眉尻を下げると運命の相手について話していなかった内容を打ち明ける。


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