敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜


 ルパ王国との戦争に勝利したハルディオ帝国は和平条約の際に賠償金の請求に加えてあることを申し出ていた。それはルパ王族に宿る神の恵みを借りること。とりわけ必要だったのはオーレリアの力だった。

「知っての通り、うちは三人も皇子がいて誰も結婚相手がいなかったから臣下から常々問題視されていたんだ。陛下の御前でこんなことを申し上げるのは憚られるけど、いつ容態が悪化してもおかしくない。だから皇帝代理として私から『素晴らしい神の恵みを持つ王女に結婚相手を見つける手助けをして欲しい』という文をルパ王へ送ったんだ」


 トラヴィスがどうしてオーレリアの神の恵みを知っているかというと、それは十二年前まで遡る。

 当時、ルパ王国では海の女神に祈りを捧げるという十年に一度の儀式が開催されていて隣国のハルディオ帝国も招待されていた。トラヴィスは三人の皇女と共に帝国の代表として参加していた。

 そして丁度、一番上の皇女は儀式の数日前に婚約が破談となり、それはそれは意気消沈していた。
 もう自分には運命の相手なんて見つからないし一生独り身だと嘆いていると突然黒髪の少女が現れて、この人が運命の相手だから心配しないでと教えてくれた。

 隣で話を聞いていた二番目と三番目の皇女は自分たちの運命の相手も見て欲しいと少女に頼み、相手の名前を教えてもらった。そして帝国に戻った三人は教えてもらった運命の相手に接触して親交を深め、遂には幸せを掴むまでに至った。
 彼女たちは今でも夫に溺愛されて幸せに暮らしている。

 そして三人の皇女と一緒にいたトラヴィスはその少女――オーレリアの凄さをその目にしっかりと焼き付けていた。だからトラヴィスは彼女の力がどれほど素晴らしいかを知っていたのだ。

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