月だけが知っている
突然現れた貴方

私は普通の大学生だ
普通に大学に通い
アパートへ帰り
それなりに不自由なく暮らしている
人並みにバイトもしていた
ただこれといった趣味もない
だからだろうか
貯金は貯まり続けている

数少ない友人が言っていた
「ソロキャンプはいいものだ」と

1人は嫌いじゃない
むしろ好きだ

そうだ、貯まった貯金の使い道がわかった

そうして私はソロキャンプへと出かけた

初めてのキャンプ

当然上手くいかなかった
テントも立てたことがないのに
なぜ私はソロキャンプなどしたのだろう

今夜はこのままレジャーシートの上で野宿か
どこか冷めた気持ちのまま
ただひたすらに組み立てた

テントが立った頃
空はすでに黒く染まっていた

今夜は曇りだ
何も見えない
ただ ただ真っ暗な空だ

それでもせっかく来たのだから
私は丘を登って空を見上げた

やっぱり何も見えない

「月が綺麗ですね」
突然隣から声が聞こえた
「何も見えないですよ」
「貴方には見えないでしょね」
何を言っているのか分からない
私には見えない
それなのに隣の男には見える
気味が悪い
「鏡でもお持ちしましょうか?」
「何を言っているのですか?」
「僕の名前は高屋悠真です。
あなたのお名前は?」

「私の名前は、、、」
あれ?私の名前、
なんだったけ
私は一体誰なの
自分の名前すら分からない
「大丈夫です。
僕は怪しいものではございません」
「今から僕の話すお話を聞いてください」

私は黙って耳を傾けた
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