【短編】会いたいと切に願う

「ちょっ……と、何で笑うのよ」

「ハハッ。だって、ひいらぎが可愛いからだよ」



ひとたび耳元で囁かれるとおとなしくなる私。

完璧手玉にとられてる。

ちょっと悔しいな。


私って、本当に好きだとこうも言い返せなくなるんだ。


一五も私の背中に手をまわすと、ギュッと抱き締めてきた。


今までで一番きつく、だけど大切に触れている気がした。

ひんやり冷たい体から、それでも温もりを感じる。


これはあなたに会えて心が反応してるから?


この腕にずっと、包まれたかった……。



「見て」



彼の声に胸に埋めていた顔をそっと上げた。


綿雪……。


空から舞い落ちてくるその雪は七色の光が当たり、綺麗に色付いて空中をヒラヒラと浮遊する。

そして、同じ色の波と同化して消えてゆく。



「綺麗……」

「また、ひいらぎとこんな景色が見れるとは思ってなかったよ」



抱き締めていた手を緩めそっと体を離すと、クシャとなる笑顔を見せてくれた。



「好き」



……って私、突然何言い出してるのー!!

いやいや、確かに好きですとも。

けどけど、ほらっ、一五も驚いた顔してるしー!

あ〜っ、穴があったら入りたい。



「……本当の俺を知っても、同じこと言える、かな?」



微かに聞こえてきた声に、私は一五に詰め寄っていた。



「本当の俺って?」



それが私の元を突然去った理由?

もしかして彼女、いや、妻子がいたりして。

それだったら私、一五のこと許せない。



「聞きたい?」

「教えてよ!!」

「じゃあ……」



そう言って差し出してきたのは、さっき私が渡した一五に別れ際に渡された紙。


これが、何?



「これもなぞなぞだったんだけど、ひいらぎ答え分かった?」

「分かんないよ。私、頭固いって言ったじゃん」

「アハハッ。そうだったね〜。じゃあ、さっきのは偶然だったのか」



……?





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