【短編】会いたいと切に願う

「好きの反対は?」

「嫌いっ!!」

「ブーッ、はずれー。逆から読んでみて?」



逆から?

好きの反対……逆から……キ、ス……?


分かった、キスー!!



「それをひいらぎからしたら、一年中いつでも傍にいられるよ?」



へっ?

今、何て?


……私からとか、恥ずかしいんですけど。



「ほらっ、早くしないと山に帰る時間が迫ってきたよー。どうする?」



何だか余裕たっぷりの態度がムカつくけれど、だけど、まだ離れたくない。

うーっ、もぅ!!



「体離してよ、
……できないじゃん」



離れたセツは愛しそうな眼差しで私を見下ろす。


もぅ、もぅ!!



「ひいらぎ、大好きだよ」




……こうして、私と雪男、セツの恋は始まった。



人間と雪男の恋がなんだっての。

私はセツが大好き!

ただそれだけ。


想い合う相手からキスをされたら、たとえ雪が降っていなくても冬が終わっても、ずっと傍にいられるって。

雪男との愛の契約の証。


まだまだセツのこと雪男のことよく分からないけれど、それを知っていくのはこれから。


それにしても、雪男って毛もくじゃらの熊みたいなのじゃなかったんだ。


人間の姿をして普段も人間と偽って、山奥の村に住んでいたちょっと人間離れした雪男。

だから女は綺麗でいいなぁって言ったんだ。

人間の認識じゃ、雪女は綺麗だもんね?


フフッ、雪男も綺麗だよ?


……けど、これは私とセツだけの秘密。



「子供五人は欲しいなぁ〜」



深いことは気にしないもんっ。



「好き〜っ、セツ〜!」



これからはずっと、この綺麗な景色を一緒に見ようね。






【END】





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