恋がはじまる日 (おまけ)

6月6日 お誕生日ショートストーリー


 私と藤宮くんが付き合い始めて、数か月が経った。


 そろそろ梅雨入り間近だとニュース内の天気予報が口々に言い始めた頃、その日は春のような暖かな陽気で、お昼ご飯を屋上で食べるのにとてもいい気候だった。


 真っ青な空に、少しの白い雲がゆっくりと流れていく。


 普段私は女の子友達とお弁当を囲むことが多く、藤宮くんも男の子達と一緒に食べることがほとんどだけれど、時たまこうして、二人でお昼ご飯を食べたりする。


 私は家から作ってきたお弁当を、藤宮くんは購買やコンビニで買ったパンやお弁当を食べることが多かった。


 放課後は私は部活、藤宮くんはアルバイトがあったりと、時間が合わないことが多い中、こうして二人きりで過ごす時間はとても貴重で、私にとってとてもかけがえのない時間だった。


 お昼ご飯を食べ終えた私達は、ゆったりしながらぽつぽつと話す。


 彼氏彼女になって、藤宮くんはかなり優しくなった気がする。以前から優しい人だとは思っていたけれど、どこか素っ気ないというか、ぶっきらぼうな感じがあった。


 けれど今では、私のことを好いてくれているのだと、はっきり分かるほどに私を大切にしてくれている。


 一緒に歩くときは歩道側を歩かせてくれたり、躓きそうな段差がある道はすぐに手をかしてくれたり。相変わらず時たまからかわれたりすることはあるけれど、そんなささやかな優しさが、やっぱり私は大好きだった。


「藤宮くん、今日と明日はバイトお休みだっけ」


「ああ」


 藤宮くんのアルバイトは、駅の向こう側にある喫茶店だった。以前文化祭で慣れた手つきで包丁を使っていたのも、その喫茶店で厨房に立ったことがあるからとのことだった。基本は接客で、注文を取ったりしてるみたい。とっても意外でかなり驚いたけれど、今度藤宮くんが働いている時にこっそり行ってみるんだ。驚くだろうな。


「それじゃあ、今日は一緒に帰れるね!私も今日と明日は部活お休みだから」


 スマホの画面をとんっとタッチすると、『6月5日13時05分メモ部活お休み』と表示されていた。


 なんとはなしに、そういえばと気が付く。


 あれ?そういえば私、藤宮くんのお誕生日知らないな。え、それって彼女としてどうなんだろうか。


 少しずつお互いのことを話したりしているけれど、肝心のお誕生日を聞き忘れていた。


 私は慌てて隣の藤宮くんに声を掛ける。


「藤宮くん!お誕生日いつ!?私、すっかり聞きそびれてたよね!?」


 もう過ぎてしまっていたらどうしよう!それはショックすぎる!せっかく付き合って初めてのお誕生日、絶対にお祝いしたい!


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