「一緒に虹を、見てみたい」






 帰って来たであろう嶋原君のことを考えて、私は朝食を済ませると、いつもより少し早く家を出た。

 嶋原君に会って、何か言いたいことがあるわけではない。

 しかし、会って無事を確認したく、帰って来た存在を確かめたかった。

 変に緊張しながら、いつもより早足に校門を潜ると、下駄箱へ向かう。

 すると、教室に入るよりも先に、私は探していた大きな背中を見つけて、初めて自分から声をかけてみた。

「おはよう」

 だが、嶋原君は振り返らずに、スタスタこの場を去ってゆく。

 ──え、無視された? シカト……?

 ビックリして、私は暫し硬直した後に、後を追うように教室へ足を進めた。

 階段を上って一年二組の教室に入ると、やはり嶋原君は自分の席についている。

 もしかして、この間消える瞬間を見てしまったから、それで怒ってるとか?

 恐る恐る自分の席に着くと、嶋原君は石黒さんや塩見君と話をしていたのだが……。







< 46 / 275 >

この作品をシェア

pagetop