カフェラテdeプリンのカサブランカ日記
 職域を広げようと思っても「見えないから無理でしょう。」「聞こえないから無理でしょう。」と言われて終わりなんです。
役所だって相手にはしません。 ハローワークだって同じこと。
求人票が出れば対応するなんて言うけれど、出たってそれが本当かどうかも分からない。
月給20万なんて書いている求人票も有るけれど、現実は2万も貰えればいいほう。
 本当に仕事が無いんです ぼくらは。
 それに比べればあなたたちは恵まれすぎている。 そう思う。
それでも労働力不足で国を挙げて騒いでるのはなぜですか? 労働環境が悪いからでしょう?
その改善もせずに労働力が足りないと言っても空念仏ですよ。

 さてさて百合さんはというと冬の間は眠っています。 水をやらなくても大丈夫か?と思うでしょう。
大丈夫です。 寝てますから。
 暖かくなるまで本当に寝てます。 3月も中旬を過ぎないと芽を出しません。
自然の摂理というやつは本当に厳格です。 頭が下がります。
ぼくらは毎日食べないと死んじゃうって思うのに、、、。
もう一つ、環境が変わると芽を出しません。 敏感なんですね。
 だからね、ぼくは水をやる時には必ず声を掛けます。
こちらがニコニコしていると成長も早いんです。 驚くほどに伸びます。
だから百合さんと向き合う時には嫌なことを忘れるようにしています。 引きずると後が悪いので。
 3月も中旬になると小さな小さな芽が出てきます。 まるでドリルで穴を開けたみたいにね。
葉っぱは全て上を向いています。 まるで爪で掘り進んでいるみたい。
葦が目を出す時はオオカミの牙みたいだって言われますが、カサブランカも同じなんですねえ。 そこにすごい生命力を感じます。
「これから伸びてやるぞ!」って言ってるみたいです。
 ぼくは百合さんに名前を付けました。 左側が美幸、右側が美香って。
二人の百合さんはこれから張り合って伸びるんでしょうね。 楽しみです。
 芽が出てきた時、それはよくよく見ていないと分かりません。
地面からほんの少し出たところを見付けるのはほんとに大変です。
 でもね、見付けた時には飛び上がりたいくらいに嬉しいもんです。 我が子が初めて歩いたような、、、。
 そんな百合さんに声を掛けます。 「よく出てきてくれたね。」って。
そして水をやります。 最初は水に浸かってしまって苦しそうに見えます。
でも球根はもっともっと水に浸かってますからね。 「ごめんね。」って謝りながら水をやります。
一か月くらいかな、やっと水の上に顔を出すようになります。 そしたらね、「やっと溺れずに済むようになったね。」って言ってやります。
 いつでも何処でも声を掛けてやることが大切です。
「世話してやろう。」なんて思ってはいけません。 植物はちゃんと分っています。
だって花も木も命に変わりは無いから。
 「大きくなったね。」 「可愛くなったね。」
思いを素直に声にします。 それが大事。
 黙って水をやると育たないんですねえ。 「何だ、それだけか。」って。
 さらに大きくなってくると葉っぱが広がってきます。 そうすると今度は葉っぱを撫でてやります。
「大きくなるんだよ。」ってね。 育ってくると下の葉が落ちます。
そうすると「これまでありがとう。」って落ちた葉っぱを撫でてやります。 ゴミにはしません。
そのまま土に埋めます。 落ち葉焚きなんてもったいないなあ。
 そんなわけで風が温かくなってきますね。 寒い間は朝一の水やりだけでもいいんですけど、温かくなると回数を増やします。
朝は「お日様をいっぱい浴びて元気に育つんだよ。」って声を掛けます。
夕方は「大きく育ったね。 また明日も元気に会おうね。」って声を掛けます。
 子供だってそうです。 声を掛けた分だけ素直に元気に育ってくれます。
何でもそうだけど、育てるんじゃないんですよ。 育つんです。
しかも親と一緒に育つんです。 世の中には親が育ったような顔をしている親子が多いですけど、あれは間違いですよ。
子供が育つのに合わせて親も育つんです。
だから「一緒に育っていこうね。」って思わないと、、、。
 子供とうまく話せないとか、子供と向き合えないとか言ってる人も居るけれど、根本が間違ってるからそうなるんです。
子育てなんて親にとっても未経験なことばかりでしょう? それをね、分かったような顔で乗り切ろうとするから子供に殴られたり殺されたりするんです。
そう思いませんか? ある意味で子供は先生です。
親の対処一つで良くも悪くもなります。 厳しい先生です。
だからって全てを子供に任せろとは言いません。 任せるととんでもないことになりますから。
そこが難しい所なんです。 そこを悩み抜いた人が本当の親です。

 百合さんはどんどん成長します。 50センチを越えてくると支柱も必要になりますね。
これがまたねえ、悩みの一つ。 さんざん悩んで茎と支柱を紐で結ぶことにしました。
でも、きつく結んではいけません。 簡単には外れない程度に軽く結んでおきます。
『倒れなきゃいいんだ。』では無慈悲です。 首を絞めるわけではないんだから。
 だから、結ぶ場所も慎重に選びます。 百合さんの気持ちになってね。
葉っぱを締め付けずにバランス良く固定できる所。 案外と難しいですよ。
上過ぎても下過ぎてもダメなんです。
百合さんのことを分かってないと決められませんね。 こう書くと(やっぱり育てるのは難しいな。)と思われる人が居ます。
そんなことは有りません。 きちんと見ていれば分かってきます。
 全盲のぼくでも分かってくるんだから。
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