恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

62話

 ついにカサンドラ・マドレーヌと名前を呼ばれ、舞踏会への扉の前にエスコート役のアオ、シュシュと並んだ。この中に入場すれば好奇な貴族達の瞳が、カサンドラ達に向くのはわかっている。

 そんな、カサンドラには心配事があった。

 馬車の中でギリギリまで、モフモフの耳と尻尾を出していたアオだけど。舞踏会への入場まで時間がかかっているし、大勢の人の前だ、せいぜい舞踏会にいれる時間は30分だと考えた方がいい。

(危なくなったら会場に私だけ残って、シュシュとバルコニーに退散してもらえばいいかしら?)

「次に私の名前が呼ばれたら入るから、アオ君、シュシュ、笑顔で行くわよ」

 カサンドラの言葉が終わると同時に、名前を呼ばれ、目の前の扉が騎士によって開かれる。会場内で名前を聞いた貴族は、入場するカサンドラの方へと好奇の視線を向けた。

 だが妹――シャリィに聞いていた話とは違った。1人だと思われたカサンドラにエスコート役がいた――そして、可憐な装いのカサンドラに貴族達は瞳を奪われた。

 一歩一歩とカサンドラが歩けば、ため息が聞こえ、エスコート役のアオに嫉妬の瞳を向けてくる者さえいた。

 アオはその視線に気付くも、カサンドラの騎士らしくエスコートに専念している。シュシュもまた視線を浴びながら、彼女は全く別のことを考えていた。

(昔、一応貴族だった頃。両親を亡くしたばかりで……デビュタントができなかった。こんな、素敵な舞踏会に参加したと思っていたわ――今夜の主役はドラお嬢様だけど、この視線クセになりそう)

「フフ、これが舞踏会ですかぁ」

 シュシュが別の楽しみ方をしていると、カサンドラは気付くも、こんな好奇の視線の中で頼もしいとも思った――それはアオもだ。

(別荘に戻ったら2人の好物をたくさん、用意しないといけないわ)

 カサンドラは入場の途中で、シャリィの晴れ舞台を見に来ていた、両親と目が合い鋭い瞳を向けられていた。

 ――どうしてお前が、こんなところに来たんだ。
 ――シャリィの幸せを壊しに来たの?
 
 2人の瞳がそう言っているようで、少し動揺をしたカサンドラだったけど、アオとシュシュのおかげで心に余裕が生まれた。



 ほとんどの貴族の入場が終わり、残すは本日の主役アサルト皇太子殿下とシャリィ、国王夫妻を残すのみ。カサンドラ達は飲み物を受け取り、バルコニー近くの壁際に移動した。

 ――そろそろかしら?
 
 奏でられていた生演奏の曲が終わり、曲調に変わる。呼び出し係は声を上げて、先に国王陛下と王妃の名を呼んだ。招待を受けた貴族達とは別の大階段へと現れ、舞踏会の会場を見下ろした。

 その後に主役の2人も呼ばれ、国王陛下と王妃の横に並んだ。
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