愚かな妹

ワイシャツを脱いだら意外にたくましいんだなぁって彼の背中を見てぼんやり思った。

自分の家から車で一時間くらいとばした寂れたホテルに入った。

車の入口のところに暖簾があって、入る前は何台車が止めてあるかわからない。

わかりやすい薄ピンクの外壁に休憩と宿泊の値段が書いてある。ただわざわざここをチョイスしたということはきっと彼は誰かと入ったことがあるのだろう。

大きなベッドにバスローブがかかったクローゼット、冷蔵庫と、その中身はおもちゃや避妊具が自販機のように並んでいる。思わず息を飲んだ。

「探検か?そんな色んなところを開けて」

「そっちこそ、ムードも何もありませんよ」

かろうじてズボンだけ穿いている彼は私を上から見下ろした。

その目はいつもと違う柔和なものでなく、獲物を追い詰めるような目だった。だから思わずあとずさりをして、壁に逃げ道を無くすのも時間の問題だった。

本能的に目を逸らし、反抗的に吐き捨てると彼の手が伸びてきて、顎をなぞり、唇を親指で撫でる。身体の背筋にぞくり、と冷たいものが這う。
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