麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


偽の婚約者としてイオンの母国に行った時に起きた事件、それはイオンの兄のように慕っていたアミルが、ワイズミュラー家を陥れようとした者達を洗い出すために国王と話をつけスパイとして動いていたのが真実だった。
その際のやりとりなどが証拠として、アミルは死ぬ前に国王へと渡していた。

敵に毒を盛られ身体を壊していた国王は奇跡的に回復、アミルの証拠により、反ワイズミュラー家、ようは現国王を排斥しようとしていた者達が一掃され、首謀者である国王の兄は処刑された。

処刑などの事は撫子には辛いだろうと話していないが、正直なところ怖がって結婚を破棄されるのを心配したイオンが、家の者達に撫子が怯えるからと口止めした。


「でも未だにニンニク好きのままとかおかしいの」

「国王いわく、俺の撫子への強い愛が全て許容してしまったのだと」

「何それ。結局は私のせいになっちゃうんだ」


じと目で見る撫子に、イオンは笑いながら口づける。
出会ってもう数年になるが撫子への愛は増していくばかり。
日本に来て右も左もわからず、途方に暮れていたところを助けてくれた少女のように幼い顔だった撫子も今は美しいという方がしっくりくる。

未だに恥ずかしそうに頬を染める婚約者の耳元に唇を寄せ、


「子供はもうしばらくしてからにしよう。
当分撫子は俺だけが独り占めしたい」


低く甘い声が耳に注がれ驚いてイオンの顔の方を向いた撫子をイオンは逃さないように捕まえ、今度は深く口づける。
運転手がいることなどお構いなしだ。
流石に恥ずかしくなった撫子が両手でイオンを押し返し赤い顔で怒りながら、


「場所をわきまえて!」

「わかった。我が家に戻ったらその分毎日愛し合おう」


言葉を失い顔を赤らめる婚約者を見ながら、イオンは愛おしそうにその黒髪へ口づけた。

大和撫子は奥ゆかしいとか清らかな日本人女性のことを言うらしい。
そして弱く見えるようで芯の強い女性だとも。

遠い国から来た麗しきヴァンパイアは、日本の大和撫子に救われた。
そんな甘いおとぎ話のようなお話は、その国で長く愛され受け継がれてゆくのだった。
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