【短】またいつか、同じ夜空を見られたら
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わたしの前世、早乙女雪子が生きたのは、今から150年ほど前。煌びやかな文明花開く明治時代だった。

資産家の娘だった雪子は、潤沢な資金で淑女としての教育を施され、どこに出されても恥ずかしくない美しい娘に成長していた。

幼い頃から家の役に立てと言われ続けており、15歳になる頃、一回り以上年上の結婚相手を親に勝手に決められたとしても、反発一つしなかった。


──そんな雪子の人生を変えたのは、早乙女家に下宿していた一人の書生。



『早乙女家ではなく、雪子さん自身の幸せは何ですか?』



周作という名のその書生は、家のためになることが自分の幸せだという価値観で生きてきた雪子にそんなことを言ってきた。

最初こそ雪子は、そんな価値観の合わない自由な周作が苦手だったけど、それが憧れに変わり、さらには恋心になるまでそう時間はかからなかった。



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