色彩わるつ。
第七章 『一番大事にしたいもの』




~飯島優里亜~

 七月に入ると、水泳の授業が始まった。

 数日、晴れたり曇ったり、小雨が降ったり。

 でも、天気が大きく崩れることなく、プール開きの日、あたしは水中ですごく息苦しさを感じながらクロールで泳いでいた。

 25メートル行って、また25メートル引き返す。

 授業時間、平泳ぎや背泳ぎも加えて、単にそれを繰り返すだけだが、あたしは水泳が得意じゃなくて、はぁはぁ、と息を荒くしながら泳ぎ切った。

「運動神経が良い優里亜が、泳げないって意外だよねー」

 四限終わりで昼休み、急がず更衣室で着替えながら、美沙は苦笑する。




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