緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

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 ヘルムフリートさん曰く、私が育てたマイグレックヒェンには何故か毒がないらしい。
 その理由を考えた私は、この温室に謎を紐解く鍵があると推理する。

「なるほど。確かに植物の成長を促進する術式が組まれているね。珍しい組み方の上、簡略化されていて更に効率化まで……うーん、これはすごいな。だけど生体情報を書き換えるような記述は無いね」

 …………私の推理は見事にハズレた。

「……やはり、アンが『緑の手』を持っているからか?」

「うーん、それはあくまでも例えだと思うけど……でも、検証する価値はあるかもしれないね」

 ジルさんとヘルムフリートさんが私を見て目を光らせる。二人とも好奇心が旺盛なところがそっくりだ。さすが幼馴染なだけはある。

「アンさん、毒が無い原因を究明したいんだけど、協力して貰えないかな?」

「仕事の後で疲れているだろうが頼む」

 マイグレックヒェンの件は私にとってもすごく気になることだから、二人の申し出を断る理由がないのでもちろん承諾する。

「私でお役に立てるなら、ぜひ協力させて下さい」

「すまない、感謝する」

「助かるよ! 有難う!」

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