緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

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 球根の検査結果を見たジルさんとヘルムフリートさんが、真剣な顔をして話し合っている。

(そんなに難しい結果が出たのかな……?)

 検査結果にソワソワしていると、ヘルムフリートさんが困ったような、苦笑いを浮かべながら説明してくれた。

「えっとね、検査結果なんだけど、結論から言うとアンさんの魔法で出した水には<浄化>に近い<治癒>の効果があるみたいなんだ」

「……はい?」

「毒がある球根は長い間瘴気に侵されていたからか、遺伝情報が変異していたよ。人間で言うと病気になりやすい感じかな? アンさんの魔法は瘴気によって変質してしまった遺伝情報を、元の状態に治療したということになるね。恐らくアンさんのお店の花が色鮮やかで、花持ちが良いのも同じ理由だと思う」

 全ての生き物は遺伝情報を持っていて、その中はまるで設計図のようになっているのだそうだ。
 そんな生命の設計図が瘴気にあてられて変異してしまったから、マイグレックヒェンは毒を持つようになり、他の花も弱まって色褪せてしまった、というのがヘルムフリートさんの出した答えらしい。

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