緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

17

 花屋「ブルーメ」から慌てて飛び出したヴェルナーはしばらく走った後、呼吸を整えながら走る速度を落としていった。

「俺は一体何を……っ!」

 思わずアンの店を飛び出してしまったが、深呼吸して落ち着いてみると、自分の挙動不審な行動に頭を抱えたくなる。

 呼吸が整ってもヴェルナーの顔は赤いままで、心臓の鼓動もずっと速い。

(アンちゃんのあんな笑顔を見せられたら、誰だってこうなるよな……)

 王都の外れにある花屋の評判を聞き、冷やかしのつもりでアンの店を訪れたヴェルナーは、生き生きと元気に一人で店を切り盛りしているアンに一目惚れしてしまったのだ。

 アンに会うために、姉へのプレゼントという口実を作って何度も店に足を運んでいたヴェルナーだったが、何となくアンから一線を引かれているような気がしていた。
 だがそれが勘違いの所為だと判明し、誤解が解けたことでアンとの距離がぐっと縮まって、あまつさえ彼女の自然な笑顔を見ることが出来た。

(これからはもっとアンちゃんの笑顔が見られるかな……)

 ヴェルナーはアンから貰った袋からプレッツヒェンを取り出し、口の中に放り込む。

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