緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

18

 橙色に染まっていく空の色に、そろそろ閉店の時間かなと思っていると、ドアベルを鳴らしてジルさんがお店に入ってきた。

 ……相変わらず花が咲き乱れる幻影は健在だ。もしこの幻影が具現化したら、花屋の商売は上がったりになるだろう。

「いらっしゃいませ!」

「む。遅くなってすまない。もう閉店の時間だろうか」

「丁度閉店しようかな、と思っていたところですから、まだ大丈夫ですよ」

 ジルさんやロルフさんのようなお得意様なら、閉店していても注文を受けてしまうけれど、実際『閉店』のプレートに変わっていなければセーフなのだ。

「うむ。なら良かった。今回の花束だが、ピンク系統の色で作って欲しい」

「ピンク系ですね、わかりました!」

 私はフロレンティーナ王女殿下の可憐な姿を想像し、並べている花からイメージに合いそうな花を選んでいく。

 カップ咲きのローゼに鮮やかなピンク色のダリエ、濃い赤紫色のステルンクーゲルにアドーニスレースヒェンと八重咲きのリシアンサス、ユングファーイングルーネン……。

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