緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

25

 ──どうしてこうなった。

「あら、アンちゃんってばすっごく肌が綺麗なのね!」

「まぁ〜、本当ね。どのブランドの化粧水を使っているの?」

「今まで化粧したことがないってホント? これはいじり甲斐があるわ〜!」

「私のドレスが着れそうね! ……あら? ウエストが余る……ですって?!」

「アンさんはスタイルが良いのですね! ステキですわ!」

 私は今ヴェルナーさんのお姉様方とフィーネちゃんにめちゃくちゃイジられている。イジると言っても意地悪の方ではなく、手を加える方のイジるだ。

 何故私がヴェルナーさんのお姉様方にイジられているのかというと、王宮から行政官の代理という人がお店に来て、依頼したいことがありその件について話し合いたい、と言われたからだ。

 そうしてお店を臨時休業にし、馬車に乗せられた私が連れて来られた場所はディーステル伯爵のタウンハウスで。
 そのディーステル伯爵邸に着いた途端、フィーネちゃんとそのお姉様方に拉致られたのである。

 そこで私は初めて知った。ディーステル伯爵家がヴェルナーさんとフィーネちゃんの家だということを。

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