緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

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 ディーステル伯爵家にお邪魔してから三日後に、婚約式が行われる会場の下見をさせて貰った。
 会場は王宮の敷地内にある神殿で、王族の冠婚葬祭はここで行われる決まりなのだそうだ。

 白い大理石で建てられた神殿は静謐で、ステンドグラスから溢れる光が神殿内に神々しい雰囲気を醸し出している。

「花を装飾する場所は正面の祭壇と、その祭壇の左右に一つづつ、通路に沿って各ベンチにも装花が必要ですね」

「な、なるほどです!」

 ディーステル伯爵様の補佐官というフランクさんが、装花が必要な箇所を私に説明してくれる。
 ちなみに伯爵様は会議でお会いすることが出来なかった。伯爵様も私を案内できず、とても残念そうだったとフランクさんが楽しそうに教えてくれた。

「王女殿下からは可愛く甘い雰囲気でお願いしたい、と伺っています。以前作られた花束に似た感じで……だそうですが、大丈夫ですか?」

 可愛くて甘い雰囲気の花束と言えば、以前お客さんにも甘い甘いと言われた花を揃えた日のことだろうか。

「……はい、大丈夫です!」

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