緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

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 ヘルムフリートさんが机の上に置いた箱の中には、魔石が埋め込まれ、花の装飾が施されている、銀で作られたらしい丸い玉が入っていた。

「うわぁ……! すごく綺麗ですね! とても魔道具には見えないです!」

 インテリアとして飾っても遜色がない綺麗な作りに、私は思わず感動してしまう。

「喜んで貰えて良かったよ。この魔道具を店に置いて欲しいんだ。明確な悪意を持つ者が近づくと、結界が発動する術式を組み込んでいてね。それと同時に騎士団に連絡が行くようになっているから、ジギスヴァルトが到着するまで待っていてくれるかな」

 防犯の魔道具と聞いていたので、てっきり音がなるぐらいかな、と思っていたら予想以上の効果があって驚いた。

「何だか凄い魔道具ですね……! わかりました! 有難うございます!」

「出来るだけ早く向かうが、念の為俺が到着するまで家の中の安全な場所に隠れていて欲しい」

「は、はいっ!!」

 騎士団の建物がある王宮からこのお店まで、馬車で30分ほどかかってしまうので、近くの衛兵団にも協力して貰うことになっているらしい。
 
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