緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

34

「おっ……王女殿下っ?!」

 まさか王族がこんな場末の店にお越しになるとは思わなかった。

 慌てて頭を下げるために膝を曲げようとした私に、王女殿下が「そのままで大丈夫よ」と声を掛けてくれた。

「驚かせてごめんね。どうしてもフロレンティーナがアンさんにお礼を言いたいって言うから、連れてきたんだ」

「いえっ、その、御礼だなんて……っ! 恐れ多いです!」

 アワアワする私を見て、王女殿下がふわりと微笑んだ。

(うわぁ……っ!! すごく綺麗……!! もしや女神様……?!)

 突然の登場に驚いて気付かなかったけれど、王女様の微笑みに我に返ってみれば、王女様はめちゃくちゃ美しい人だった。

「うふふ。私、アンさんにお会いできるのをとても楽しみにしていたの。いつも素晴らしいお花を有り難う。それにマイグレックヒェンのことも。貴女は私の命の恩人よ」

 王女様はそう言うと、私の目の前までやってきて、私の両手をギュッと握ってくれた。

「ひ、ひゃいっ! ととと、とんでもないれす!」

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