緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

エピローグ






 * * * * * *




「うむ。やはりアンの淹れてくれるクロイターティは美味しいな」

 リラックスした様子のジギスヴァルトが、ゆっくりとクロイターティを味わっている。
 
「えへへ。嬉しいです!」

 フロレンティーナとヘルムフリートの婚姻式も無事終わり、アンネリーエたちは久しぶりに休日を一緒に過ごしていた。

 婚姻式に使用したため、花畑は一時期花がほとんど生えてない状態であった。
 しかし今は、アンネリーエが手を加え、ほぼ元通りの状態になっている。

 アンネリーエは新しいマイグレックヒェンの球根を植えると、水魔法の呪文を詠唱する。

<我が生命の源よ 清らかなる水となりて 我が手に集い給え アクア=クリエイト>

 呪文の詠唱が終わると、アンネリーエの魔力がキラキラと光る粒子となって、手のひらに集まり、うずをまきながら水に変化する。

 その光景は、何度見ても神秘的で、とても神聖なものに見えた。

 花に水を与えているアンネリーエを見つめながら、ジギスヴァルトは彼女と共にいる喜びと幸せを噛み締める。

 ガラス張りの天井から零れ落ちる光と、アンネリーエの魔力が放つ光が、温室中を優しく照らしていく。

 ジギスヴァルトは、ポケットに閉まっていた小さな箱を取り出すと、珍しく緊張した面持ちでアンネリーエの名前を呼んだ。

 ──そうして、ジギスヴァルトはアンネリーエに永遠の愛を誓う。
 
 甘い輝きが降り注ぐ、この光の中で。








< 326 / 326 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:97

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop