緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
エピローグ
* * * * * *
「うむ。やはりアンの淹れてくれるクロイターティは美味しいな」
リラックスした様子のジギスヴァルトが、ゆっくりとクロイターティを味わっている。
「えへへ。嬉しいです!」
フロレンティーナとヘルムフリートの婚姻式も無事終わり、アンネリーエたちは久しぶりに休日を一緒に過ごしていた。
婚姻式に使用したため、花畑は一時期花がほとんど生えてない状態であった。
しかし今は、アンネリーエが手を加え、ほぼ元通りの状態になっている。
アンネリーエは新しいマイグレックヒェンの球根を植えると、水魔法の呪文を詠唱する。
<我が生命の源よ 清らかなる水となりて 我が手に集い給え アクア=クリエイト>
呪文の詠唱が終わると、アンネリーエの魔力がキラキラと光る粒子となって、手のひらに集まり、うずをまきながら水に変化する。
その光景は、何度見ても神秘的で、とても神聖なものに見えた。
花に水を与えているアンネリーエを見つめながら、ジギスヴァルトは彼女と共にいる喜びと幸せを噛み締める。
ガラス張りの天井から零れ落ちる光と、アンネリーエの魔力が放つ光が、温室中を優しく照らしていく。
ジギスヴァルトは、ポケットに閉まっていた小さな箱を取り出すと、珍しく緊張した面持ちでアンネリーエの名前を呼んだ。
──そうして、ジギスヴァルトはアンネリーエに永遠の愛を誓う。
甘い輝きが降り注ぐ、この光の中で。
終